渡良瀬遊水地での野鳥観察のススメ。猛禽類やコウノトリなどが見られるバードウォッチングスポットを360度写真付きで紹介

渡良瀬遊水地の概要

渡良瀬遊水地は栃木県、埼玉県、茨城県、群馬県の4つの県にまたがる遊水地です。総面積は約33キロ平方メートルもあり、日本最大規模となっています。

もともとこのエリアには板倉沼や赤渋沼、赤麻沼など、周辺に比べると低い土地で、洪水が発生すると川から溢れ出た水が溜まる湿地帯が広がっていました。この湿地帯を囲むように堤防を築き遊水地として活用されています。

なお、この地に遊水地作られたのは名目上、洪水対策としてですが、本来の目的は明治時代におきた公害事件『足尾鉱毒事件』で発生した鉱毒を沈殿させることでした。

現在は上流から流れてくる鉱毒の量も減り、洪水が発生しないよう水を溜めたり、首都圏で渇水が起きた際に水を供給したりなど、治水と利水の役割を担っています。

ラムサール条約に登録される湿地帯

鉱毒を沈殿させる目的で作られた遊水池ですが、現在では一帯に日本最大と言われるヨシ原が広がるなど、とても自然豊かな遊水池となっています。

植物は約1,000種、昆虫類は約1,700種が生息していて、鳥類も約260種も暮らしていたり越冬のために訪れたりと、多くの命を育んでいて、2012年には湿地の保存に関する国際条約『ラムサール条約』にも登録されました。

遊水池のエリア内は一般の人でも立ち入ることができ、植物や野生動物などを観察し、自然を体感できるスポットとなっています。

渡良瀬遊水地は野鳥観察に最適

自然がとても豊かな渡良瀬遊水地は野鳥が生息するために必要な広大な湿地帯もあり、野鳥の楽園となっています。日本で確認できる野鳥の種類の約半分となる『263種』が確認されており、とても多くの種類の野鳥を観察できるバードウォッチングスポットです。

冒頭にも書いた通り渡良瀬遊水地はとても広い遊水池ですが、その全域がバードウォッチングスポットとなっていて、一日中野鳥観察を楽しんでも時間が足りないほどの規模となっています。

谷中湖のある第一調整池には駐車場があったり、公衆トイレや谷中湖展望台などがあったりと設備が整っていますので、谷中湖の北側にある駐車場に車を駐めて、野鳥観察をすると良いでしょう。

渡良瀬遊水地は猛禽類の宝庫

枝に止まって見下ろすトラフズク

枝に止まって見下ろすトラフズク

渡良瀬遊水地は多くの猛禽類を観察できるバードウォッチングスポットとして有名です。生息している猛禽類の種類も豊富で、オオタカやノリス、トピなどに加え、ハイイロチュウヒやハヤブサ、チョウゲンボウなど都市部ではなかなか目にすることのない猛禽類を観察できます。

中でもトラフズクやコミミズクなどフクロウの仲間は渡良瀬遊水地で人気の野鳥です。コミミズクは冬鳥で、越冬のために渡良瀬遊水地に飛来してきます。基本は夜間に活動する鳥なので、日が傾いた夕方頃にポイントとなる第二調節池の巴波川沿いなどを探すと出会える確率が上がります。

なお、トラフズクは留鳥として渡良瀬遊水地で暮らしていますので、一年を通して探すことができるフクロウの仲間です。

コウノトリの野外繁殖

大空を舞うコウノトリ

大空を舞うコウノトリ

渡良瀬遊水地にはコウノトリの定着と野生復帰を支えるため、人工巣塔が設置されています。人工巣塔は渡良瀬遊水地の第1調整池、第2調整池、第3調整池それぞれにあります。詳しい場所は公式サイト(PDF)をご確認ください。

日本国内の野生のコウノトリは1971年に絶滅してしまいましたが、その後すぐに野生復帰プロジェクトが進めれれ、兵庫県や千葉県、福井県などで人工飼育や野外放鳥が行われています。

そして、2020年5月には渡良瀬遊水地の人工巣塔にてコウノトリのヒナが誕生したとして世間を騒がせました。それ以降も渡良瀬遊水地には多くのコウノトリが飛来してきており、また自然繁殖する姿が観測されています。

なお、コウノトリを観察する際は生息環境を崩してしまわないよう、細心の注意を払って観察するようにしましょう。ルールやマナーについては、公式サイトをご確認ください。

なお、小山市はコウノトリの繁殖が確認された第2調節池内の人工巣塔のライブ映像をyoutubeで配信しています。
渡良瀬遊水地-コウノトリの人工巣塔のライブカメラ

渡良瀬遊水地で見られる野鳥

留鳥(一年を通して出会える鳥)

留鳥とは繁殖や子育て、越冬などを一定の場所で行う鳥です。渡り鳥のような季節に応じて生息する場所を変える鳥ではありませんので、季節にかかわらず出会える鳥です。ただし、小さい鳥は木の葉っぱが散って枝だけになっている方が見つけやすいなど探しやすさは季節ごとに違いがあります。

  • アオサギ
  • ウグイス
  • エナガ
  • オオセッカ
  • オオタカ
  • オナガ
  • カルガモ
  • カワウ
  • カワセミ
  • カワラヒワ
  • キジ
  • キセキレイ
  • ゴイサギ
  • コウノトリ
  • コゲラ
  • コサギ
  • コジュケイ
  • シジュウカラ
  • セグロセキレイ
  • セッカ
  • ダイサギ
  • チュウヒ
  • チョウゲンボウ
  • トビ
  • ハクセキレイ
  • ハヤブサ
  • バン
  • ヒバリ
  • ヒヨドリ
  • ホオジロ
  • ミサゴ
  • ミヤマガラス
  • ムクドリ
  • メジロ
  • モズ

アオサギ

水辺を歩くアオサギ

アオサギは体長が90センチ以上にもなる、日本で見られるサギの仲間では最大の鳥です。体が大きく見ごたえがあることからバードウォッチングではとても人気の野鳥となっています。

成鳥は足や首がスラリと長く、頭には黒い冠羽があります。背(翼)部分は灰色ですが、それがくすんだ青色に見えるのがアオサギという名前の由来と言われています。(諸説あります)

アオサギは浅い水辺で魚や両生類などの捕まえて食べていますが、時に小鳥を捕食することもあります。また、他の鳥から獲物を横取りすることでも知られています。

ハクセキレイ

ハクセキレイ

ハクセキレイは体長約21センチほどの野鳥です。スマートな体型をしていて、尾羽根が少し長いのが特徴となっています。

頭部から背中にかけて黒色もしくは灰色で腹部は白色で、首元にも黒色が入っています。雄の夏羽は黒色となりコントラストがはっきりとします。

昔、関東では冬鳥として知られていましたが、繁殖地が南下し1970年代以降は東京での繁殖も確認され留鳥となっています。

漂鳥

漂鳥とは日本国内で季節に応じて生息場所を変える鳥です。それに対し、移動する距離が長く日本と国外とを行き来する鳥は渡り鳥と呼ばれています。

漂鳥は暖かい季節には北の地域や標高の高い場所に生息し、寒い季節になると南の地域や低地に移動して越冬します。

渡良瀬遊水地では基本、晩秋から冬、春の初頭にかけて出会える可能性が高い鳥たちです。

  • アオジ
  • オオバン
  • カイツブリ
  • クイナ
  • シメ
  • トラフズク
  • ノスリ
  • ハイタカ
  • ベニマシコ
  • マガモ

カイツブリ

水面を泳ぐカイツブリ

カイツブリは体長25~30センチほどの水鳥です。カモに似ていますがカイツブリ目カイツブリ科の鳥で、カモではありません。北海道や本州の北エリア、または山地では夏場の暖かい季節のみ生息する漂鳥ですが、本州中部以南の低地では留鳥として一年を通して観察できる野鳥となっています。

ベースの色は茶色ですが、首元の羽毛が夏は赤っぽく、冬は黄色っぽく淡い色に変化します。

体の作りとして歩くのにはバランスが悪いのですが、泳ぐのには適した体となっていて、潜水もとても得意な鳥です。潜水して小魚やエビ、水中の昆虫などを捕食します。

シメ

シメは体長約18センチのスズメ目アトリ科の野鳥です。スズメよりも若干大きく、色は全身茶褐色がベースで翼の先が黒色となっています。

日本では夏場に北海道で繁殖を行い、寒い季節には本州に渡ってきて越冬します。カエデやムクノキなどの種子を主食としていますので、その付近を探すと良いでしょう。

鳴き声が「シー」と聞こえることから、鳥を意味する接尾語である「メ」からその名がついたと言われています。

夏鳥

夏鳥とは、暖かい春~夏の季節に日本国内に飛来し繁殖活動を行い、秋には日本を離れ国外で越冬する渡り鳥たちのことです。

  • アカハラ
  • オオヨシキリ
  • カッコウ
  • コアジサシ
  • コヨシキリ
  • チュウサギ
  • ツバメ
  • ヒクイナ
  • ホトトギス

オオヨシキリ

ヨシの葉にとまるオオヨシキリ

オオヨシキリは体長18センチほどの小さな野鳥です。夏場に飛来して繁殖活動を行い、冬は熱帯地域へ渡り越冬し、また暖かい季節に日本に戻ってきます。

頭部から背中(翼)にかけてはスズメのように茶褐色で、首元から胸、腹にかけては白い羽毛となっています。

食性は動物食で、昆虫を捕まえて食します。イネ科のヨシ(アシ)を切り裂いて中の昆虫を捕食することから、オオヨシキリという名前がつきました。夏場にヨシが群生する湿地帯などを探すと見つけやすい野鳥です。

カッコウ

木の枝にとまっているカッコウ

カッコウは体調約35センチのやや細身でスマートな野鳥です。頭部から背中、翼の上面は灰色で、お腹の羽毛は白色で細かい横縞が走っています。

名前にもなった「カッコウ」という独特な鳴き声をしていて、姿を見たことがない人でもその名前や鳴き方は知っている人が多い、有名な野鳥と言えるでしょう。

アフリカや南アジアで越冬をして、春から夏にかけて日本に訪れる夏鳥です。

他の種類の鳥の巣に卵を生み、その巣の主に自分の卵と雛の世話をさせる托卵性の鳥で、オオヨシキリやモズなどの巣に托卵することで知られています。

冬鳥

冬鳥は秋から冬にかけて日本国内に訪れ越冬する渡り鳥です。春には日本を離れて北へ移動し、繁殖や子育てを行い、また寒い季節に日本に戻ってきます。

  • アトリ
  • オオジュリン
  • オナガガモ
  • カシラダカ
  • カワアイサ
  • カンムリカイツブリ
  • キンクロハジロ
  • コガモ
  • コチョウゲンボウ
  • コミミズク
  • ジョウビタキ
  • シロハラ
  • セグロカモメ
  • タゲリ
  • タヒバリ
  • ツグミ
  • ハイイロチュウヒ
  • ハシビロガモ
  • ハジロカイツブリ
  • ヒドリガモ
  • ミコアイサ
  • ヨシガモ

ジョウビタキ

枝にとまっているジョウビタキ

ジョウビタキは全長約15センチほどの小さな野鳥です。

ベースの色は薄い茶色に、オスのみ頭が銀白色に顔部分が黒と比較的カラフルな羽毛を持っていますが、メスは翼の一部に白斑があるのみで地味な色味となっていてスズメに見間違えられることもあります。

夏にチベットやロシア極東などで繁殖を行い、冬になれると日本全国に渡り鳥としてやってきますが、近年は日本国内での繁殖も確認されています。

体の小さい鳥は群れることが多いのですが、こんおジョウビタキは群れを作らず単体で暮らしています。

ヒドリガモ

群れで水面を漂うヒドリガモ

ヒドリガモはオスの体長が約50センチ、メスが40センチほどのカモです。マガモやコガモと同様、日本ではよく目にするポピュラーなカモとなっています。

見た目はオスのほうが派手な色合いとなっていて、顔は茶色いがベースに額から頭頂部にかけてクリーム色のラインが入っています。背中側は灰色ですが尾羽根に近い先の方は美しい黒色となっています。

ユーラシア大陸の北部で繁殖を行い、越冬のために日本などに渡ります。日本では冬に全国で観察することができます。淡水の池だけでなく、海上や海岸でみかけることも多い野鳥です。

渡良瀬遊水地へのアクセス

渡良瀬遊水地の場所(地図)

電車

渡良瀬遊水地はとても広いため、どこで野鳥観察を楽しみたいかによって最寄り駅が変わってしまいますが、体験活動センターへは東武日光線の『板倉東洋大前駅』が最寄り駅となっています。

なお、板倉東洋大前駅から体験活動センターわたらせまでは徒歩40分の距離です。

その他東武日光線の『柳生駅』『藤岡駅』『新古河駅』や、JR宇都宮線『古河駅』も利用可能です。

車・駐車場

最寄りのインターチェンジは、東北自動車道の『佐野藤岡インターチェンジ』もしくは『館林インターチェンジ』で、ICより体験活動センターわたらせまでは車で20分ほどです。

駐車場は複数ありますが、体験活動センターわたらせ近くの駐車場にとめて、そこを拠点にバードウォッチングを楽しむと良いでしょう。

渡良瀬遊水地の野鳥に関するみんなのツイートと写真

埼玉県内のその他バードウォッチングスポット

渡良瀬遊水地のある埼玉県には、まだまだたくさんのバードウォッチングスポットがあります。

埼玉は海のない県として知られていますが、実は面積に占める河川の割合では日本一です。行政も『川の国埼玉』と銘打って、川の環境保護や再生事業に取り組んでいるため、野鳥が好む自然豊かな水辺が豊富で、野鳥観察に適したスポットが県内各所に存在しています。

都心からアクセスしやすく、気軽に野鳥観察が楽しめるスポットが多いのも埼玉の魅力のひとつと言えるでしょう。

以下の記事では、埼玉県の数あるバードウォッチングスポットの中から初心者でも楽しみやすい場所を厳選して紹介しています。

埼玉県内での探鳥の旅を楽しみたい方は、ぜひご参考ください。
埼玉県の野鳥観察スポット15選!初心者でもバードウォッチングが楽しめる公園などを中心に360度写真付きで紹介します

渡良瀬遊水地の基本情報

  • 住所:栃木県栃木市、栃木県小山市、栃木県下都賀郡野木町、茨城県古河市、埼玉県加須市、群馬県邑楽郡板倉町
  • 電話番号:080-8818-9381(体験活動センターわたらせ)
  • 料金:無料
  • トイレ:あり
  • 駐車場:あり(無料)
  • 公式サイト
  • ガイドマップ(公式/PDF)

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