鎌北湖の概要
鎌北湖は埼玉県入間郡毛呂山町にある人工的に作られた農業用貯水池です。完成したのは昭和10年(1935年)と歴史は古く、当時発生していた世界恐慌への対策として進められた公共事業の一環で作られました。
正式名称は『山根溜池』ですが、第二次世界大戦後に毛呂山町観光協会が「かまきた湖」という呼び名でアピールしたことをきっかけに、鎌北湖という名前が定着したと言われています。
鎌北湖ではボート遊びやヘラブナ釣りが楽しめる他、奥武蔵自然歩道の玄関口に位置していてハイキングコースとしても人気の高いスポットとなっています。また、紅葉のシーズンには毎年『鎌北湖紅葉まつり』が開催され多くの人が訪れます。
鎌北湖は野鳥観察に最適
鎌北湖の周辺は外秩父山地となり人里離れた自然豊かなエリアとなっています。都会の喧騒から離れたひっそりとした雰囲気があるためか『乙女の湖』という愛称も持っています。
湖の周辺は鬱蒼とした木々が立ち並ぶ森となっていて多くの野生動物が生息しており、野鳥も例外ではありません。鎌北湖周辺で暮らす留鳥はもちろん、海外から渡ってくる夏鳥や冬鳥も多く、野鳥観察にも最適なスポットとなっています。
カワセミやオオルリ、ベニマシコなどバードウォッチャーに人気の野鳥が目白押しで、普段街中ではなかなか見かけない野鳥に出会うことが可能です。
中でも鎌北湖では『サンコウチョウ』が見られることで有名で、サンコウチョウが営巣する夏場は一目見ようとたくさんのバードウォッチャーの方が足を運びます。
サンコウチョウはオスに長い尾羽があるのが特徴的な野鳥です。メスの体長が約17.5センチなのに対しオスは約45センチで、そのオスの体長の内30センチ以上は尾羽となっています。
なお、オスの尾羽が長いのは繁殖期のみで、日本にやってくる春から初夏は尾羽が長く、繁殖活動が終わり海外へと渡る秋頃には長い尾羽がなくなっています。
繁殖期のオスが長い尾羽を付けて飛ぶ姿は幻想的で、バードウォッチャーには一度は見てみたい憧れの野鳥です。
鎌北湖で見られる野鳥
留鳥(一年を通して出会える鳥)
留鳥とは繁殖や子育て、越冬などを一定の場所で行う鳥です。渡り鳥のような季節に応じて生息する場所を変える鳥ではありませんので、季節にかかわらず出会える鳥です。ただし、小さい鳥は木の葉っぱが散って枝だけになっている方が見つけやすいなど探しやすさは季節ごとに違いがあります。
- アオサギ
- ウグイス
- エナガ
- ガビチョウ
- カワセミ
- カワラヒワ
- キジ
- キジバト
- キセキレイ
- コゲラ
- シジュウカラ
- スズメ
- セグロセキレイ
- ハシボソガラス
- ヒガラ
- ヒヨドリ
- ホオジロ
- ミソサザイ
- ムクドリ
- メジロ
- ヤマガラ
カワラヒワ
カワラヒワは体長14センチほどで、スズメと同じくらいの大きさの野鳥です。茶褐色がベースの色で一見地味に見えますが、翼の一部が黄色い羽毛となっていて、飛び立つと黄色い模様が目立ちます。
雛には虫の幼虫を与えますが、成鳥は主に植物の種を好んで食べます。森や林だけでなく、街路樹や庭木などにも巣を作ることで知られています。
コゲラ
コゲラは日本でもっともよく見られるキツツキの仲間です。体長は15センチほどで日本に生息するキツツキの仲間では最も小さいキツツキとして知られています。
背中は焦げ茶色に白いまだら模様が特徴的で、オスのみ後頭部に赤い羽毛がありますが野外では目視できないほど小さいため、オスメスを見分けるのは難しい鳥です。
雑食性で昆虫や木の実を食べています。キツツキらしく木に穴を開けて隠れている昆虫を捕食することもあります。
留鳥ですが、葉の落ちた冬場に見つけやすい野鳥となっています。
漂鳥
漂鳥とは日本国内で季節に応じて生息場所を変える鳥です。それに対し、移動する距離が長く日本と国外とを行き来する鳥は渡り鳥と呼ばれています。
漂鳥は暖かい季節には北の地域や標高の高い場所に生息し、寒い季節になると南の地域や低地に移動して越冬します。
鎌北湖では基本、晩秋から冬、春の初頭にかけて出会える可能性が高い鳥たちです。
- アオジ
- オシドリ
- カイツブリ
- カヤクグリ
- シメ
- ノスリ
- ベニマシコ
オシドリ
オシドリはオスの体長45センチ前後、メスが40センチほどでオスのほうが若干体の大きな水鳥です。体の大きさだけでなく、オスは少し派手な色彩となっているのに対し、メスは地味な色合いの鳥となっています。
「オシドリ夫婦」という言葉の由来にもなっていて、ツガイで行動していることが多く、その仲睦まじい姿からバードウォッチングの対象としても人気の高い野鳥です。
暖かい季節に北海道などの北の地域で繁殖を行い、冬場は本州以南に移動して越冬する漂鳥ですが、海外から渡ってくる冬鳥のオシドリもいるようです。
シメ
シメは体長約18センチのスズメ目アトリ科の野鳥です。スズメよりも若干大きく、色は全身茶褐色がベースで翼の先が黒色となっています。
日本では夏場に北海道で繁殖を行い、寒い季節には本州に渡ってきて越冬します。カエデやムクノキなどの種子を主食としていますので、その付近を探すと良いでしょう。
鳴き声が「シー」と聞こえることから、鳥を意味する接尾語である「メ」からその名がついたと言われています。
夏鳥
夏鳥とは、暖かい春~夏の季節に日本国内に飛来し繁殖活動を行い、秋には日本を離れ国外で越冬する渡り鳥たちのことです。
- オオルリ
- キビタキ
- コサメビタキ
- コマドリ
- サンコウチョウ
- ツバメ
- ヤブサメ
オオルリ
オオルリは体長約16センチほどの野鳥です。メスは背中側が茶褐色で腹が白と地味なのに対し、オスはその名の通り背中側が濃い青(瑠璃色)に腹が白ととても美しい色を持っています。
夏場に日本に訪れ繁殖活動を行い、冬になると東南アジアなどに移動して越冬し、また暖かい季節に日本に戻ってくる夏鳥です。
とても目立つ色をしていますが、木の高い場所にとまっていることが多く見つけるのが難しいと言われています。ゆっくりと「ピリーリー、ポィヒーリー、ピールリ、ピールリ、ジィ、ジィ」と美しい特徴的なさえずりをしますので、声を頼りに探してみると良いでしょう。
キビタキ
キビタキは体長13~14センチほどの小さな野鳥です。メスは地味な色合いですが、オスは黒をベースとした翼に旨や頭の一部に黄色い羽毛を持ち、カラフルな姿でバードウォッチャーを楽しませてくれます。
昆虫を捕食するため雑木林を好んで住処にしていますので、雑木林を中心に探してみると良いでしょう。また、明け方にオスは縄張りを誇示するために美しい声を発します。鳴き声を頼りに探すのもコツのひとつです。
夏場に日本で繁殖を行ったキビタキは、冬の訪れとともに東南アジアへ渡り越冬し、また暖かい季節に日本に戻ってきます。
冬鳥
冬鳥は秋から冬にかけて日本国内に訪れ越冬する渡り鳥です。春には日本を離れて北へ移動し、繁殖や子育てを行い、また寒い季節に日本に戻ってきます。
- カシラダカ
- ジョウビタキ
- シロハラ
- ツグミ
ジョウビタキ
ジョウビタキは全長約15センチほどの小さな野鳥です。
ベースの色は薄い茶色に、オスのみ頭が銀白色に顔部分が黒と比較的カラフルな羽毛を持っていますが、メスは翼の一部に白斑があるのみで地味な色味となっていてスズメに見間違えられることもあります。
夏にチベットやロシア極東などで繁殖を行い、冬になれると日本全国に渡り鳥としてやってきますが、近年は日本国内での繁殖も確認されています。
体の小さい鳥は群れることが多いのですが、こんおジョウビタキは群れを作らず単体で暮らしています。
ツグミ
ツグミは全長約24センチの野鳥です。体調はムクドリと同じくらいですが、ムクドリに比べてスマートな体型となっています。
羽の部分は茶褐色で、お腹や胸側は白と黒のまだら模様が特徴。まだら模様が濃くはっきりとしている個体がオスで、逆に薄い個体がメスです。
地面に降りて餌となる昆虫を探す際に、両足でピョンピョン跳ねるように移動する姿から古くは跳馬とも呼ばれていました。
鎌北湖へのアクセス
鎌北湖の場所(地図)
電車
最寄り駅はJR八高線の『毛呂駅』ですが、駅からは距離があり鎌北湖までタクシーで10分ほどの道のりです。
車・駐車場
最寄りのインターチェンジは圏央道の『圏央鶴ヶ島インターチェンジ』で、ICから鎌北湖までは車で20~30分の距離となっています。
なお、鎌北湖には鎌北湖第一駐車場、鎌北湖第二駐車場の2つの無料駐車場が備わっています。
鎌北湖の野鳥に関するみんなのツイート
毛呂山町 鎌北湖を散歩。野鳥がたくさん見られて楽しかった。サンコウチョウも撮ったが下手くそ手振れで…。🤣#キジ #ウグイス pic.twitter.com/c8LbEg6YFn
— コアス (@koas15) May 31, 2020
鎌北湖ではよくここに来るというご夫婦と1時間ほどお話を聞きながら歩きました。
鎌北湖にいる鳥の話やこの辺りで見応えのある場所を教えて下さりました。バスの到着までの1時間があっという間でした。 pic.twitter.com/MorY5x5yV6
— ざわわ@埼玉県市町村巡り (@zawawa_saitama) August 29, 2022
今日の鎌北湖。午前中はカワセミ撮り、そして午後からは自転車活動でしたが、天気も良くて湖畔は鮮やかに色映えしていました。 pic.twitter.com/Him9YnTcnt
— きーじぇい (@ryojyouha) December 1, 2018
鎌北湖で出会ったキセキレイさん。片足立ちでくつろいでいる。 pic.twitter.com/3olCSibVts
— ホオジロ (@Meadow_Bunting) September 20, 2014
ヒヨドリ(鎌北湖)。 いつでも、どこでも見られるヒヨドリも、サクラに留まれば絵になるか。 pic.twitter.com/7hyLeFKwIs
— 佐藤コトノハ (@kotonoha310jp) April 6, 2014
埼玉県内のその他バードウォッチングスポット
鎌北湖のある埼玉県には、まだまだたくさんのバードウォッチングスポットがあります。
埼玉は海のない県として知られていますが、実は面積に占める河川の割合では日本一です。行政も『川の国埼玉』と銘打って、川の環境保護や再生事業に取り組んでいるため、野鳥が好む自然豊かな水辺が豊富で、野鳥観察に適したスポットが県内各所に存在しています。
都心からアクセスしやすく、気軽に野鳥観察が楽しめるスポットが多いのも埼玉の魅力のひとつと言えるでしょう。
以下の記事では、埼玉県の数あるバードウォッチングスポットの中から初心者でも楽しみやすい場所を厳選して紹介しています。
埼玉県内での探鳥の旅を楽しみたい方は、ぜひご参考ください。
▶浅羽ビオトープで野鳥観察のススメ。埼玉県内有数のバードウォッチングスポットを360度写真付きで紹介
鎌北湖の基本情報
- 住所:埼玉県入間郡毛呂山町大字宿谷
- 電話番号:049-250-8143(毛呂山町観光協会)
- 料金:無料
- トイレ:あり
- 駐車場:あり(無料)
- 公式サイト
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