伊佐沼で野鳥観察のススメ。シギの仲間など旅鳥もたくさん訪れるバードウォッチングスポットを360度写真付きで紹介

伊佐沼の概要

伊佐沼は埼玉県川越市にある面積約20万平方メートルの沼です。南北が約800メートルに対して東西は約200~300メートルと、長方形に近い形状をしています。

第二次世界大戦の前は現在よりも倍の広さがありましたが、戦時中に食糧増産のための干拓が行われ、現在の面積に縮小されました。ただし、干拓で縮小されたとは言え現在でも埼玉県内の自然沼としては最大を誇り、また関東でも千葉県の印旛沼に次ぐ2番目の広さです。

自然の残る沼にはヘラブナやコイなどが生息していて釣りを楽しむことができる他、沼の西岸にはフィールドアスレチックやじゃぶじゃぶ池のある『伊佐沼公園』が隣接していて、人気のレジャースポットにもなっています。

また、沼には水鳥を始めたくさんの野鳥が飛来してくる、県内有数のバードウォッチングスポットとしても知られています。絶滅危惧種のクロツラヘラサギが飛来してくるなど、野鳥にとっても貴重な沼と言えるでしょう。

伊佐沼は野鳥観察に最適!

伊佐沼の周辺は田畑が多く、都会の喧騒から少し離れたのどかな雰囲気のある場所です。沼には一年を通して様々な水鳥が羽を休めに訪れます。また、外周約2.4キロメートルの水辺には木々も植樹され、水鳥以外の野鳥も多く飛来してくるため、野鳥観察に最適なスポットです。

沼の北側にはハス田があり、そのハス田などの湿地帯を散策できるように木道が設置されていて水辺の野鳥を観察しやすい環境が整っているのも魅力のひとつとなっています。

季節ごとに水位が変わる

伊佐沼は農業用水の調整池にもなっているため、季節によって沼の水位が変わり雰囲気も一変します。訪れる野鳥も季節ごとに様々で、一年を通して野鳥観察が楽しむことが可能です。

春から夏の温かい季節には水位が高く、沼の北側のハス田周辺ではカルガモやバンなどの水鳥が営巣して繁殖を行うため、かわいい雛の姿を見ることができます。

水が抜かれる8月末以降は干潟のような湿地帯ができあがり、アオサギやコサギなどのサギ類が訪れやすい他、渡り鳥のシギ類、チドリなどが渡りの中継地としても飛来してくることで知られています。

伊佐沼で見られる野鳥の種類

留鳥(一年を通して出会える鳥)

留鳥とは繁殖や子育て、越冬などを一定の場所で行う鳥です。渡り鳥のような季節に応じて生息する場所を変える鳥ではありませんので、季節にかかわらず出会える鳥です。ただし、小さい鳥は木の葉っぱが散って枝だけになっている方が見つけやすいなど探しやすさは季節ごとに違いがあります。

  • アオサギ
  • イカルチドリ
  • イソシギ
  • オオタカ
  • オナガ
  • カルガモ
  • カワウ
  • カワセミ
  • カワラバト
  • カワラヒワ
  • キジ
  • キジバト
  • キセキレイ
  • ゴイサギ
  • コゲラ
  • コサギ
  • シジュウカラ
  • セイタカシギ
  • セグロセキレイ
  • セッカ
  • ダイサギ
  • トビ
  • ハクセキレイ
  • ハヤブサ
  • バン
  • ヒバリ
  • ヒヨドリ
  • ホオジロ
  • ミサゴ
  • ムクドリ
  • メジロ
  • モズ

アオサギ

水辺を歩くアオサギ

アオサギは体長が90センチ以上にもなる、日本で見られるサギの仲間では最大の鳥です。体が大きく見ごたえがあることからバードウォッチングではとても人気の野鳥となっています。

成鳥は足や首がスラリと長く、頭には黒い冠羽があります。背(翼)部分は灰色ですが、それがくすんだ青色に見えるのがアオサギという名前の由来と言われています。(諸説あります)

アオサギは浅い水辺で魚や両生類などの捕まえて食べていますが、時に小鳥を捕食することもあります。また、他の鳥から獲物を横取りすることでも知られています。

キセキレイ

枝にとまっているキセキレイ

キセキレイは体長約20センチほどの野鳥で、スズメ目セキレイ科に属します。尾羽が長く体長の半分ほどを占め、いつもこの尾羽をフリフリと上下に動かす姿から、「石たたき」や「庭たたき」とも呼ばれます。

胸から腹部、お尻のほうにかけて黄色い羽毛で覆わているのが特徴で、特に夏場は黄色が鮮やかになり、見るものを魅了します。

群れは作らず単独かツガイで行動しています。渓流沿いで生活していることが多いので、水辺付近を探すと良いでしょう。

漂鳥

漂鳥とは日本国内で季節に応じて生息場所を変える鳥です。それに対し、移動する距離が長く日本と国外とを行き来する鳥は渡り鳥と呼ばれています。

漂鳥は暖かい季節には北の地域や標高の高い場所に生息し、寒い季節になると南の地域や低地に移動して越冬します。

伊佐沼では基本、晩秋から冬、春の初頭にかけて出会える可能性が高い鳥たちです。

  • アオジ
  • オオバン
  • カイツブリ
  • シメ
  • ノスリ
  • ハイタカ
  • マガモ

オオバン

水面を泳ぐオオバン

オオバンはツル目クイナ科の水鳥です。体長は40センチ弱あり、クイナの仲間では最大となっています。真っ黒い体に真っ白いクチバシとおでこというシンプルな配色が特徴的です。

足には水かきがあり水面を泳ぐのが得意です。水面近くにある水草の葉や種子を食べたり、潜水して水生植物の茎を食べたりします。また、雑食性で時には魚や昆虫を捕食することもあります。

シメ

シメは体長約18センチのスズメ目アトリ科の野鳥です。スズメよりも若干大きく、色は全身茶褐色がベースで翼の先が黒色となっています。

日本では夏場に北海道で繁殖を行い、寒い季節には本州に渡ってきて越冬します。カエデやムクノキなどの種子を主食としていますので、その付近を探すと良いでしょう。

鳴き声が「シー」と聞こえることから、鳥を意味する接尾語である「メ」からその名がついたと言われています。

夏鳥

夏鳥とは、暖かい春~夏の季節に日本国内に飛来し繁殖活動を行い、秋には日本を離れ国外で越冬する渡り鳥たちのことです。

  • アマサギ
  • エリグロアジサシ
  • オオヨシキリ
  • コアジサシ
  • コチドリ
  • ササゴイ
  • シロチドリ
  • チュウサギ
  • ツツドリ
  • ツバメ
  • ヨシゴイ

オオヨシキリ

ヨシの葉にとまるオオヨシキリ

オオヨシキリは体長18センチほどの小さな野鳥です。夏場に飛来して繁殖活動を行い、冬は熱帯地域へ渡り越冬し、また暖かい季節に日本に戻ってきます。

頭部から背中(翼)にかけてはスズメのように茶褐色で、首元から胸、腹にかけては白い羽毛となっています。

食性は動物食で、昆虫を捕まえて食します。イネ科のヨシ(アシ)を切り裂いて中の昆虫を捕食することから、オオヨシキリという名前がつきました。夏場にヨシが群生する湿地帯などを探すと見つけやすい野鳥です。

コチドリ

地面に降りてきたコチドリ

コチドリは体長約16センチほどの、日本に生息するチドリの仲間では最も小さい野鳥です。成鳥は頭部と背中が茶色、腹が白色で、首周りと顔の一部が黒と特徴的な色となっています。また、目の周りには黄色い輪があるのも特徴です。

動物食の鳥で、昆虫やミミズなどを食べる他、浅い水辺に入って水中の昆虫を捕食することもあります。

日本では夏鳥で、夏に本州や九州、四国などで繁殖を行い、越冬のため冬は海外へと渡ります。

冬鳥

冬鳥は秋から冬にかけて日本国内に訪れ越冬する渡り鳥です。春には日本を離れて北へ移動し、繁殖や子育てを行い、また寒い季節に日本に戻ってきます。

  • オカヨシガモ
  • オナガガモ
  • カシラダカ
  • カンムリカイツブリ
  • キンクロハジロ
  • クロツラヘラサギ
  • コガモ
  • ジョウビタキ
  • タゲリ
  • タシギ
  • タヒバリ
  • ツグミ
  • ハシビロガモ
  • ヒドリガモ
  • ホシハジロ

オナガガモ

水面を泳ぐオナガガモのオス

オナガガモはその名の通り尾羽根が長いのが特徴的なカモです。ただし、尾羽根が長いのはオスのみで、メスはオスに比べて尾は短めとなっています。また、体長もオスは75センチほどまで成長するのに対し、メスは55センチほどと体格差もあります。

また、柄もメスは地味な色合いなのに比べ、オスは顔(頭部)が茶褐色ですが首から胸にかけて白い羽毛を持ち、派手ではありませんがユニークな模様を持つ水鳥となっています。

なお、夏場は局地に近いツンドラ地帯で繁殖を行い、冬に日本の本州以南で越冬する冬鳥です。

ジョウビタキ

枝にとまっているジョウビタキ

ジョウビタキは全長約15センチほどの小さな野鳥です。

ベースの色は薄い茶色に、オスのみ頭が銀白色に顔部分が黒と比較的カラフルな羽毛を持っていますが、メスは翼の一部に白斑があるのみで地味な色味となっていてスズメに見間違えられることもあります。

夏にチベットやロシア極東などで繁殖を行い、冬になれると日本全国に渡り鳥としてやってきますが、近年は日本国内での繁殖も確認されています。

体の小さい鳥は群れることが多いのですが、こんおジョウビタキは群れを作らず単体で暮らしています。

旅鳥

旅鳥とは夏に日本より北の地域で繁殖し、冬は日本より下の地域に渡り越冬する野鳥で、渡りの途中で日本に立ち寄る渡り鳥です。

旅鳥は基本、春と秋に飛来してきますが、どちらか一方の季節だけに飛来してくるケースもあります。

  • アオアシシギ
  • アカアシシギ
  • アカエリヒレアシシギ
  • アジサシ
  • アメリカウズラシギ
  • ウズラシギ
  • エゾビタキ
  • エリマキシギ
  • オオハシシギ
  • オグロシギ
  • オジロトウネン
  • クロハラアジサシ
  • コアオアシシギ
  • タカブシギ
  • ツルシギ
  • トウネン
  • ハジロクロハラアジサシ
  • ハマシギ
  • ムナグロ

アオアシシギ

アオアシシギ

アオアシシギは全長約35センチほどのチドリ目シギ科の野鳥です。足が青みがかっているのが名前の由来となりますが、実際は薄っすらと緑味のある灰色となっています。

背中は茶褐色でお腹は白と少し地味な色合いですが、足やくちばしは細長く、スマートな印象を持つ鳥です。

ユーラシア大陸で繁殖を行い東南アジアやインド、アフリカなどに渡って越冬します。日本へは渡りの途中となる春や秋に飛来し、その姿を見せてくれます。昆虫や両生類を捕食するため、田んぼや湿地帯で見つけることが可能です。

伊佐沼へのアクセス

伊佐沼の場所(地図)

電車・バス

最寄り駅はJR川越線『南古谷駅』ですが、駅から伊佐沼までは徒歩30分と距離があります。

バスも利用する場合は、JR川越線、東武鉄道の『川越駅』や西武新宿線の『本川越駅』から出ている西武バス(本52)に乗り、『伊佐沼冒険の森』というバス停で下車すると良いでしょう。

車・駐車場

関越自動車道の『川越インターチェンジ』が最寄りのインターチェンジで、ICから伊佐沼までは車で約20分の距離です。

駐車場は伊佐沼公園に備わっている無料駐車場を利用できます。

伊佐沼の野鳥に関するみんなのツイート

埼玉県内のその他バードウォッチングスポット

伊佐沼のある埼玉県には、まだまだたくさんのバードウォッチングスポットがあります。

埼玉は海のない県として知られていますが、実は面積に占める河川の割合では日本一です。行政も『川の国埼玉』と銘打って、川の環境保護や再生事業に取り組んでいるため、野鳥が好む自然豊かな水辺が豊富で、野鳥観察に適したスポットが県内各所に存在しています。

都心からアクセスしやすく、気軽に野鳥観察が楽しめるスポットが多いのも埼玉の魅力のひとつと言えるでしょう。

以下の記事では、埼玉県の数あるバードウォッチングスポットの中から初心者でも楽しみやすい場所を厳選して紹介しています。

埼玉県内での探鳥の旅を楽しみたい方は、ぜひご参考ください。
埼玉県の野鳥観察スポット15選!初心者でもバードウォッチングが楽しめる公園などを中心に360度写真付きで紹介します

伊佐沼の基本情報

  • 住所:埼玉県川越市伊佐沼 字沼田町584
  • 料金:無料
  • トイレ:あり(伊佐沼公園の公衆トイレ)
  • 駐車場:あり(無料/伊佐沼公園 西駐車場)
  • 伊佐沼公園の公式サイト

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